(画像はHuluの配信ページから)
この記事を書いたきっかけは、2025年の広末涼子のニュースだった。
新東名高速道路で事故を起こした後、搬送先の病院で看護師にけがをさせたとして傷害容疑で逮捕。その後、4月16日に釈放された。
簡単にいうと、広末涼子が車をぶつけて、傷害と薬物疑惑で逮捕になってたけどしれっと釈放された。
その「釈放記念」で記事を投稿したんだよね。
我ながら雑である。
ちなみに当時いろいろな憶測も飛び交っていたけど、本鑑定ではアルコールや違法薬物は検出されていない。
そんなタイミングで、広末涼子の代表作の一つでもある1998年のドラマ、
『聖者の行進』
を初めて観た。
想像していたより、だいぶしんどい。
暴力。
差別。
性的虐待。
家族との関係。
知的障がいのある人たちが置かれている環境。
1998年のドラマなんだけど、今観ても普通に重い。
というか、2020年代に観るからこそ、
「これ当時のゴールデンタイムで流してたの?」
と思う場面もかなりある。
ただ、しんどいだけのドラマでもなかった。
広末涼子演じる“ありす”と、いしだ壱成演じる永遠の関係は、この作品の中ではかなり大きな救いになっている。
……だからこそ、第7話がキツい。
今回は最終話まで観たうえで、『聖者の行進』の感想、ありすの死因、実話との関係までまとめていく。
まずはネタバレなし。
そのあとガッツリ内容に触れる。
『聖者の行進』とは?1998年の野島伸司ドラマ
『聖者の行進』は1998年にTBSで放送された全11話のドラマ。
脚本は野島伸司。
主演はいしだ壱成で、酒井法子、広末涼子、安藤政信、雛形あきこ、松本恵、いかりや長介、段田安則などが出演している。
知的障がいのある町田永遠たちが住み込みで働く工場を舞台に、そこで行われている暴力や搾取、その中で生まれる友情や恋愛を描いた作品だ。
TBSの現在の作品紹介でも、平和に見える工場の裏で、従業員への暴行や女性工員への性的な加害が行われていることが物語の中心として説明されている。
放送当時はかなりの人気作で、最高視聴率は22.1%。
今なら22%で大騒ぎだけど、当時はこれでも野島伸司ドラマの世界ではあり得る数字だったらしい。
怖い時代である。
ネタバレなし感想|とにかく重い。でも妙に続きが気になる
最初の数話は、正直かなり観るのが大変だった。
映像が暗い。
起こることも暗い。
登場人物がずっと酷い目に遭ってる。
「そろそろ一回くらい良いこと起きてもよくない?」
と思うんだけど、なかなか起きない。
ただ、それでも続きを観てしまう。
何なんだ、このドラマ。
という感じだった。
もう一つ、最初にかなり引っかかったのが、知的障がいのある人物を当時の人気俳優たちが演じていること。
もちろん役者が役を演じること自体がおかしいわけではない。
ただ、2020年代の感覚だとイケメン俳優が障がい者を、「演じている」という部分が先に目に入る。
しかも、
いしだ壱成。
安藤政信。
雛形あきこ。
松本恵。
みんな顔が良すぎる。
特に安藤政信。
工場に安藤政信がいる。
浮くわ。
最初はその違和感が結構あった。
でも数話観ていくうちに、少しずつ気にならなくなってくる。
そして、その重たい世界の中で一番の救いになるのが、広末涼子演じる土屋ありすだった。
赤い髪で、学校にも馴染めず、父親にも反抗している女子高生。
永遠が彼女のPHS(ガラケー?)を拾ったことで二人の交流が始まる。
最初は、「広末だけ別の青春ドラマから来てない?」くらい空気が違う。
でも、その違いがいい。
この辺から先は、もう普通にネタバレする。
ここから先は『聖者の行進』のネタバレあり
ここからは第7話のありすの最期、後半の裁判、最終話まで触れる。
まだ観ていない人は、ここで一度止めた方がいい。
現在は以前よりかなり観やすくなっていて、Prime Video・U-NEXT・Huluで配信を確認できる。
Huluの公式ページには、暴力的な場面や性的暴行、自殺などを含むことについて視聴上の注意も掲載されている。
配信状況(2026年9月16日確認)
Prime Video:○ 見放題
U-NEXT:○ 見放題
Hulu:○ 見放題
Netflix:―
Apple TV:―
※配信状況は変更される場合があります。
ちなみに他のドラマもレビューしているので興味のある人はぜひみてみて欲しい。
1〜4話、とにかく地獄
序盤、本当にキツい。
永遠は家でも居場所がなく、知的障がいのある人たちが住み込みで働く竹上製作所へ入る。
ところが、そこで待っているのが地獄。
職員から暴力を受ける。
まともに賃金も扱われない。
女性工員への性的虐待まである。
「そこまでやる?」
と思うくらい酷い。
しかも映像もずっと暗い。
唯一まだ見ていられるのが、永遠とありすの関係だった。
だから、
「まあこの二人がいるなら……」
と思いながら観ていた。
野島伸司は、そんな視聴者の気持ちを許してくれない。
広末涼子演じる「ありす」はなぜ死んだ?
ここはこの記事に検索で来る人も多いと思うので、結論から書く。
ありすは自殺したわけではない
第7話「星になったありす」で、踏切へ入ってしまった永遠を助けようとして、ありすは列車にはねられる。
重傷を負って病院へ運ばれ、一度は意識を取り戻す。
しかし、その時の負傷が原因となって死亡する。
つまり、
ありすは自殺したのではなく、永遠を助けようとして列車にはねられ、その事故による負傷で亡くなった。
これが答え。
本当にキツい。
ずっと重いドラマの中で、ありすだけは永遠にとって工場の外側にある希望みたいな存在だった。
そこを途中で消す。
野島伸司、容赦がない。
ありすが死んでから、物語が一気に変わる
ありすの死を境に、ドラマの空気が変わる。
ありすの父親は市長。
娘が亡くなったことで、永遠たちに対する世間の見方まで悪化していく。
一方、工場の中では、「このまま虐待され続けていていいのか」という動きが強くなっていく。
そして安藤政信演じる高原廉についても、ここで重要な事実が出てくる。
廉は知的障がい者ではない。
障がいのある妹・鈴のそばにいるため、自分も障がいがあるように振る舞って工場で働いていた。
最初から、どう考えてもこいつだけイケメンすぎる
と思っていた。
イケメンすぎたのは伏線だったのだろうか。
たぶん違う。
妙子の妊娠と、後半の裁判
後半になると、序盤から描かれていた性的虐待がさらに大きな問題になっていく。
雛形あきこ演じる妙子の妊娠が発覚。
やがて工場で起きていたことをめぐって裁判へ進む。
ここでこのドラマが、単なる
「悪い社長を倒して終わり!」
ではないのが面白い。
工場は酷い。
そこで行われていることも酷い。
じゃあ工場をなくせば全部解決なのか。
そうでもない。
そこで暮らしている人がいる。
働いている人がいる。
仲間もいる。
外から見れば明らかに異常な環境でも、本人たちにとってそこが生活の場所でもある。
だから後半はずっと、
正義って何なんだ。
本人たちにとって幸せって何なんだ。
という話になってくる。
軽い気持ちで観始めたのに、全然軽く終わらせてくれない。
『聖者の行進』は実話?モデルは「水戸事件」
『聖者の行進』は、登場人物やストーリーをそのまま再現した「実話ドラマ」ではない。
ただし、背景には実際の事件がある。
茨城県立図書館が国立国会図書館のレファレンス協同データベースに登録している回答では、『聖者の行進』のモデルになった事件として、水戸市の段ボール加工会社「アカス紙器」で起きた知的障がい者虐待事件を挙げている。
茨城県水戸市の段ボール加工会社の有限会社アカス紙器(有限会社水戸パッケージを経て現・有限会社クリーン水戸)は積極的に知的障害者を従業員として雇用し、従業員全員を会社の寮に住まわせていた。アカス紙器社長のMは、障害者雇用に熱心な名士として地元では尊敬されていた。
しかし1995年10月、アカス紙器が障害者雇用により国から交付される特定求職者雇用開発助成金を受け取っていながら、実際には知的障害者の従業員に対してほとんど賃金を支払っていないことが発覚し、翌年Mは詐欺容疑で逮捕された。
詐欺容疑でMの近辺を捜査する過程、Mが長年にわたり、従業員の知的障害者に対して虐待・暴行を行っていたことが判明した。その内容は、角材や野球のバットで殴る・両膝の裏にジュースの缶や角材を挟んで正座させ、膝の上に漬物石を乗せて長時間座らせておくといった拷問ともいうべきものであった。知的障害者の従業員たちは満足に食事を与えられておらず、時にはタバスコをふりかけた飯や腐りかけたバナナなどを食べさせられることもあったという。さらに知的障害者の女性従業員に対する強姦も頻繁に行われ、被害者は10人近くにのぼると言われている。
いわゆる「水戸事件」「水戸アカス事件」と呼ばれているものだ。
つまり、
ドラマの人物や展開そのものが実話というわけではない。
でも、知的障がいのある人たちが働く環境で、虐待や搾取が行われていた
という大きな背景には現実の事件がある。
これを知った時、
「さすがにドラマだから盛ってるんだろ」
と思っていた部分が急に笑えなくなった。
普通に重い。
「再放送できないドラマ」と言われるけど、本当にNGなのか
俺が『聖者の行進』を知ったきっかけの一つが、「今では再放送できないドラマ」みたいな紹介だった。
昔の過激なドラマをまとめた動画や記事でよく出てくるやつ。
ただ調べてみると、
TBSが公式に「この作品は再放送禁止です」と発表しているわけではない。
少なくとも、その根拠になる公式資料は確認できなかった。
実際、2019年にはBlu-ray BOXも発売されているし、2026年現在は複数のVODで配信されている。
なので、
「放送禁止になった作品」と断定するのは違うと思う。
ただ、現在のHulu配信ページでも、暴力的なシーン、障がい者を揶揄する表現、性的暴行、自殺などについて明確な注意書きが付いている。
つまり、
封印作品ではない。
でも、現代ではかなり扱いの難しい作品。
このくらいが一番正確なんじゃないだろうか。
脚本は野島伸司。そりゃ重いわ
ちなみに同じく野島伸司が企画・原案を務めた伝説のドラマ「フードファイト」も再放送禁止と言われていた…
だが、2026年3月6日(金)にHuluで配信されている。
まじで嬉しい。近いうちにレビューしたい。
俺は子どもの頃『フードファイト』が好きだった。
俺の胃袋は宇宙だ!
さらに余談なんだけどSMAPの「らいおんハート」の作詞も野島伸司。
多才すぎる。
大人になって『聖者の行進』を観て、
「これも同じ人なのかよ」
となるとは思わなかった。
中島みゆき「糸」がズルい
そして、このドラマは音楽が強い。
中島みゆきの「糸」と「命の別名」。
「糸」は1992年発表の楽曲で、『聖者の行進』への起用を経て、その後多くのアーティストにカバーされ、広く知られる曲になっていった。
今では結婚式でも普通に流れる曲だけど、このドラマでは全然そんな空気じゃない。
散々しんどいものを見せられたあとに「糸」が流れる。
すると、
「まだ何か救いがあるかもしれない」
みたいな気持ちになる。
ズルい。
この曲がなかったら、俺は序盤で結構危なかった。
広末涼子演じる“ありす”が、やっぱり良かった
この記事を書くきっかけ自体は広末涼子だった。
でも、ドラマを最後まで観ると、普通にありすが良かった。
最初は赤い髪で荒れている。
父親にも反抗する。
学校にも馴染めない。
永遠と出会って、少しずつ変わる。
工場の中の出来事とは違う場所で、永遠に普通の青春を見せてくれる存在でもある。
だからこそ、第7話の退場が効く。
ありすが死んだあとは、本当にドラマから色が一個消えた感じがする。
最初は、「広末目当てで観てみるか」くらいだった。
終わってみれば、
広末がいなくなってから普通に寂しかった。
『聖者の行進』は今観てもキツい。でも観てよかった
『聖者の行進』は、万人におすすめできるドラマではない。
暴力もある。
性的虐待もある。
障がいに関する表現も、今見るとかなり時代を感じる。
観ていて楽しい作品でもない。
それでも最後まで観た。
そして今になって配信されている意味もあると思う。
「昔はこんな過激なドラマがあったんだ」
だけで終わらず、
本人にとっての幸せとは何なのか。
助けるって何なのか。
外側の人間が勝手に正義を決めていいのか。
そんなことをずっと考えさせられる。
あと安藤政信はずっとイケメンだった。
そこは最後まで変わらない。
「再放送できない伝説のドラマ」みたいな言葉だけ知っている人は、今なら普通に配信で観られる。
気になるなら、一度観てみてもいいと思う。
Prime Video:○ 見放題
U-NEXT:○ 見放題
Hulu:○ 見放題
Netflix:―
Apple TV:―
※配信状況は変更される場合があります。
