【釈放記念】広末涼子の代表作の一つ「聖者の行進」をレビューする【9話までネタバレあり】

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zenzen

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(画像はHuluの配信ページから)

広末涼子が車をぶつけて、傷害と薬物疑惑で逮捕になってたけどしれっと釈放された。

そんな記念すべき(?)タイミングで、彼女の代表作とも言える1998年のドラマ『聖者の行進』をレビューしたいと思う。

他のドラマレビューも是非。

この時の広末はまだ灰皿にうんこもしていないし、酒井法子も麻薬でブリブリな様子はない。(多分)

このドラマ、知ってる人は知ってるけど「再放送できないドラマ」として有名で、世代じゃない人には「名前だけ聞いたことある」って感じだと思う。
ちなみに中島みゆきの『糸』が有名になったのは、このドラマの主題歌に使われたのが最初。

で、そんな曰くつきの作品なんだけど、最近になって各動画配信サービスで配信が始まった。これはもう広末涼子がまた何かやらかして配信停止になる前に、観るしかない。
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視聴のきっかけと第一印象:「障がい者のふり」への違和感

まずこのドラマを知ったきっかけは、例の「再放送NGドラマ」ということでだった。キムタクがバタフライナイフをカチャカチャする『ギフト』なんかと並んで、「二度と見られない系」として紹介されてたやつ。

このドラマは扱っているテーマが重く「障がい者」とか「健常者」とかが頻繁に出てきてしまう。これもあって見るのがきつい。

それでも聖者の行進は平日の22時に放送され、最高視聴率37.2%を記録した。が、一度も再放送されていないらしく配信で見られるのも相当すごいと思う。

で、観てみてまず驚いたのが、主演のいしだ壱成が知的障がいを持った青年役だったこと。

当時の人気絶頂俳優が「知的障がい者のふり」(演技)をしている、という事実にどうしても引っかかってしまって、正直ちゃんと観るのに時間がかかった。特に、出てくる障がい者たちが妙に美男美女で、髪型も整っていて、どこか「演じてる感」がにじみ出ているのがキツい。

安藤政信とか、イケメンすぎて逆に浮いてるし。そういう意味でも、このドラマはかなり視聴者を選ぶ。


ドラマ序盤(1〜4話):ひたすら地獄

主人公(いしだ壱成)は健常者の弟からいじめられ、家を追い出され、障がい者が集まる作業所に入れられる。

で、ここからが地獄。作業所では職員から日常的に暴力を受け、唯一の味方っぽい工場長はあんまり動かないし社長からは、障がい者の妙子(雛形あきこ)をレイプするという衝撃展開。

このあたりは本当に観ててしんどい。映像のトーンも暗いし、救いがなさすぎる。唯一の癒しは、主人公と広末涼子演じるヒロインの恋愛だけど、ヒロインの両親は主人公と一緒に行動することをよく思っていない。


5話くらいでで一変する展開と社会的テーマ

ここまでがマジで大変。超しんどい。

5話くらいでだいぶ展開が変わって障がいを持つメンバーが少しずつ一致団結していき、
7話で主人公をかばった広末涼子が、電車に飛び込んで死亡。これがきっかけで物語が一気に動き出す。

実は広末は市長の娘という設定で、その死をきっかけに「障がい者が健常者を殺した」かのようなバッシングを受けてしまう。

ここで重要なのが安藤政信の設定。彼は実は健常者で、妹(障がい者)のそばにいたいがために障がい者のふりをして作業所で働いていた、という事実が明かされる。イケメンすぎたのは伏線だったのだろうか。

妊娠、裁判、そして選択

9話では、レイプされた雛形あきこが妊娠していたことが発覚。工場長の仕業だが、誰も彼女の声を信じない。

ここで立ち上がるのが、酒井法子演じる“もも先生”。彼女が法廷で真実を暴き、障がい者たちを守ろうと奔走する展開がアツい。

ただし、問題なのは、工場を潰してしまうと障がい者たちの「住める場所」がなくなってしまうという現実。正義と生活の板挟みで、彼らがどんな選択をするのかが、ドラマ後半の核となる。


再放送NGの理由:「水戸事件」がベース

このドラマのモデルとなったのは、1995年に茨城県水戸市で起きた「水戸事件」。職員による日常的な暴行や虐待が問題となった、日本の福祉史に残る事件だ。

茨城県水戸市の段ボール加工会社の有限会社アカス紙器(有限会社水戸パッケージを経て現・有限会社クリーン水戸)は積極的に知的障害者を従業員として雇用し、従業員全員を会社の寮に住まわせていた。アカス紙器社長のMは、障害者雇用に熱心な名士として地元では尊敬されていた。

しかし1995年10月、アカス紙器が障害者雇用により国から交付される特定求職者雇用開発助成金を受け取っていながら、実際には知的障害者の従業員に対してほとんど賃金を支払っていないことが発覚し、翌年Mは詐欺容疑で逮捕された。

詐欺容疑でMの近辺を捜査する過程、Mが長年にわたり、従業員の知的障害者に対して虐待・暴行を行っていたことが判明した。その内容は、角材や野球のバットで殴る・両膝の裏にジュースの缶や角材を挟んで正座させ、膝の上に漬物石を乗せて長時間座らせておくといった拷問ともいうべきものであった。知的障害者の従業員たちは満足に食事を与えられておらず、時にはタバスコをふりかけた飯や腐りかけたバナナなどを食べさせられることもあったという。さらに知的障害者の女性従業員に対する強姦も頻繁に行われ、被害者は10人近くにのぼると言われている。

ウィキペディアより引用


この事実を知ったとき、「なるほど再放送できない理由ってこれか」と妙に納得してしまった。社会的メッセージが強く、今の基準で見てもギリギリどころか完全アウトなシーンもある。


脚本・野島伸司の有名作

脚本は、90年代の名物脚本家・野島伸司。『高校教師』『ひとつ屋根の下』『未成年』など、社会のタブーに切り込む重たい作品を手がけてきた人で有名な人らしい。

調べてみると2000年の草彅剛主演「フードファイト」もこの人の企画から始まっているらしいが
こちらも大食いによる死亡事件があったために再放送はされていない。
俺の胃袋は宇宙だ!(私は幼稚園に通っていたがこのドラマが好きだった)
しかもこのドラマの主題歌であった「ライオンハート」の作詞家でもあるらしい。多才すぎるだろう。

それにしても、脚本も演出もキャストも、全員ガチすぎて、正直ちょっと引くくらいの熱量。


そして主題歌「糸」の破壊力

そして何よりもこのドラマを語る上で外せないのが、中島みゆきの「糸」だ。

初めてこの曲を聴いたとき、なんだか分からんけど泣けてきた。ドラマがどんなに辛くても、エンディングで「糸」が流れるだけで「ああ、なんか希望あるのかも…」って思わせてくれる。この歌がなかったら、視聴完走できなかったかもしれん。


広末涼子の落差に驚く

で、改めて言いたいんだけど、広末涼子って当時めっちゃ清純派扱いだったらしい。

登場すぐこそ赤髪の不良っぽい感じで登場するが、ピュアで献身的な役。今の「灰皿にうんこ疑惑」とか「車ぶつけてハイになってた」とかのイメージとは正反対。

だからこそ、このドラマでの演技は本当に良かったし、今観ると妙に感慨深い。


観るべきか?ATARUの中居くんと比べて

(画像はATARU Amazon primevideoより)

最終回まで観終えたとき、面白いかはどうか別にして「このドラマ、今だったら絶対に作れないし、放送もできない。」とは思ったので見てみてもいいかもしれない。

俳優陣の全力演技、社会的テーマ、野島節、中島みゆきの音楽、そしてなによりも「一度も再放送されていない」という重みもある。

ちなみにこのドラマの演技を見て一つ思い出したことがある。
2012年のドラマ「ATARU」での中居くんだった。ドラマは配信されておらず映画だけ見てみたんだけど中居くん演技うまかったんだなって…広末涼子だけでなく、二人とも惜しい…
中居くんの演技はまたこのドラマの演技と違った演技でこっちも時間があれば見てほしいけど
映画を全部みただけだと内容全然わからない。
「中居くんと堀北真希が対になる存在」とか言ってたんだけど芸能界の去り際も対だもんなと思った。

どちらもU-NEXTかHuluで観られるけど、いつ配信停止になるか分からない。特に広末涼子がまた何かやらかしたらアウトだろう。

今だから観られる作品かなって(どっちもね)

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