映画・ゲーム・作品

美容師が『ビューティフルライフ』を今さら見たら、思ったより美容室がリアルだった

zenzen

1994年北海道出身、福岡在住。美容師しながら映画・ゲーム・ガジェット・暮らしを実体験ベースで書いています。
プロフィールを見るXを見る

(画像はNetflix配信ページより)

『ビューティフルライフ』というドラマを知っているだろうか。
2000年にTBS系列で放送された、木村拓哉演じる美容師・沖島柊二と、常盤貴子演じる図書館司書・町田杏子の恋愛ドラマだ。

めちゃくちゃ有名なドラマなので、「何を今さら」と思う人もいるかもしれない。

でも美容師の私は見たことがなかった。
というのも1994年生まれなので、放送当時はまだ子ども。

美容師になってから先輩に話を聞くことはあったけど世代ではないし、わざわざDVDを借りてまで見ようとも思えなかった。
それが配信で見られるようになって、ようやく見てみた。

俺はこのドラマに憧れて美容師になったわけではない。
美容師を約8年やった後に、初めて『ビューティフルライフ』を見た。ということになる。

だから恋愛ドラマとして楽しみながらも、
「この美容師はリアルなのか?」
「2000年の美容室ってこんな感じだったのか?」

というところばかり気になってしまった。

そして見終わって思った。

意外とちゃんとしてる。

もちろん、「いや、それはないだろ」もある。

『ビューティフルライフ』で美容師は増えたのか

日本には美容師がめちゃくちゃいる。

厚生労働省の衛生行政報告例を見ると、美容師数も美容所数も長期的には増えてきた。

そして美容師の新規免許取得者を見ると、1990年代末から2000年代初頭にかけて増えている時期がある。

ちょうどその頃、2000年に放送されたのが『ビューティフルライフ』だ。

そのため美容業界では昔から、「ビューティフルライフを見て美容師を目指す若者が増えた」という話をよく聞く。

もちろん、美容師が増えた原因をドラマ一本だけに求めることはできない。

ただ、実際に影響を受けた美容師がいたことは間違いない。

俺の先輩にもいた。

『ビューティフルライフ』を見て美容師に憧れて、服装までキムタクを真似していた。
パタゴニアのゴアジャケット着て、ゴーグルつけてバイクで出社。

本当にいるんだ……と思った。

ちなみに俺はそいつが嫌いだった。
(すぐ暴力振ってたからね、しょうがないね)

ドラマに罪はない。

そもそも『ビューティフルライフ』ってどんなドラマ?

有名美容室で働く美容師・沖島柊二(木村拓哉)と、車椅子で生活する図書館司書・町田杏子(常盤貴子)の恋愛ドラマ。

平均視聴率30%超、最終回では40%を超えた大ヒット作だ。
今では各配信サイトでもみれるので確認してみてほしい。

現在の配信状況は各動画配信サービスでご確認ください。
※配信状況は変更される場合があります。

Apple TVで配信を確認する

Netflixで配信を確認する

Prime Videoで配信状況を確認する

U-NEXTで配信状況を確認する

美容師が主人公というだけでも珍しいのに、当時のキムタクが美容師をやる。

そりゃ流行るよな。

当時28歳くらいの最高にかっこいいキムタク。
痺れる。

美容師から見ると、柊二は意外とリアル

俺の場合、『ビューティフルライフ』を見て美容師になった人とは順番が逆だ。

ドラマを知らずに美容師になって、約8年現場に立ってから柊二を見ることになった。

当然、「こんな美容師いるか?」という目線になる。

結論から言うと、誇張されている部分はあるけど、柊二みたいな美容師はいると思う。

「こっちの方が似合う」と言い切る美容師はいる

柊二はお客さんに対して結構強い。

本人の希望を全部そのまま聞くというより、「こっちの方が似合う」

と自分の提案を押し出す。

でも、これは別に珍しくない。

「どっちにします?」

と全部お客さんに委ねるのではなく、

「いや、あなたなら絶対こっちです」と強く提案する美容師は全然いる。

もちろん誰が言っても成立するわけじゃない。

でも柊二は雑誌のページを任されて、ヘアショーまで任される美容師だ。

そこまでの実績を持った美容師から、「お客さんはこっちが似合うんで」と言われたら、それ自体が半ば成立してしまう。

むしろ心強いくらいだ。

まぁ、人気がない理由もわかるけど。

作中で言われるほど無愛想でもない

柊二は作中で無愛想な美容師として扱われる。

でも美容師として見ていると、言うほど無愛想か?と思った。

確かにラフだし、接客中でも感情が表に出すぎているところはある。

ただ、それ以外は全然あり得る範囲だと思う。

ドラマなので多少尖らせているだけで、「現実には絶対いない美容師」ではない。

それどころか先輩として背中を見せているところも結構いい。

雑誌の仕事をして、ショーを任されて、技術に自信がある。

そりゃかっこいいだろう。

当時の若者が憧れたのも分かる。

美容室の細かい描写は意外とリアル

ドラマを見ていて面白かったのが、技術そのものより細かい美容室描写だった。

シャンプー台で自分の髪を濡らす

朝、出勤してきた柊二がダルそうにシャンプー台で自分の髪を濡らす。

これ、美容室で働いたことがある人なら見たことあるんじゃないだろうか。

普通にやる。こういう細かいところを見ると、「ちゃんと美容室を見て作ってるんだな」と思える。

ただ、接客中お客様の髪と顔近くね?

と思う場面もある。

まあキムタクならいいか。

ティッシュを切ってシザーの切れ味を見る

シザー(美容師が使うハサミ)でティッシュを切って、切れ味を確認するシーンもある。

これも分かる。

シザーは美容師にとってかなり大事な仕事道具なので、切れ味は気になる。

……ところが。

このあと、とんでもないことを始める。

でも自分でシザーを研ぐのはありえない

柊二、自分のシザーを自分で研ぐ。

包丁みたいにシャッシャッと。

いやいやいや。

それはない。

美容師のシザーって、かなり繊細な道具だ。

安いものでも仕事で使うならそれなりの値段がするし、数万円、物によってはもっとする。

そして切れ味が悪くなったら、普通はシザーの研ぎを専門にしている業者に出す。

それを、「最近切れ味悪いな」くらいのノリで包丁みたいに自分で研ぐ。

ティッシュで切れ味を確認するところまでは、

「分かる分かる」と思っていた。

その直後にこれ。

ここだけは美容師として全力で言っておきたい。

真似しないでください。

2000年の「おしゃれな美容室」が面白い

美容師としてもう一つ面白かったのが、店そのものだ。

今のおしゃれな美容室って、白っぽい空間に無機質な椅子と鏡、コンクリートやステンレス、みたいな内装がかなり多い印象がある。

『ビューティフルライフ』の美容室は全然違う。

曲線的というか、2000年当時に考えられていた「未来のおしゃれ」みたいなものを感じる。

今見ると逆に新鮮だ。

ただしスタッフルームは広すぎる

美容室のセット自体は見ていて楽しい。

でも一つだけ明らかにおかしい。

スタッフルームが広すぎる。

あれはない。
羨ましい。

現実の美容師は、ドラマの100分の1くらいのスペースで飯食ってる。

スタッフが二人入ったら、「ちょっとごめん」

ってなるくらいのところでおにぎり食ってる。

あんな広大なバックルームを美容室に作れるなら客席増やすわ。

技術を見ると「昔の美容師」を感じる

当然だけど、カットや練習の描写には時代を感じるところも多い。

これがまた面白い。

とにかくストロークカット

めちゃくちゃストロークカットする。

この時代を通ってきた美容師さんって、ストロークカット好きなイメージがある。

セニングシザー、いわゆるスキばさみをあまり使わない。

俺が美容師になった頃にはもちろんセニングも普通に使っていたので、

「この辺は時代だな」と思った。

美容師個人がスタイルブックなどで「自分のスタイル」を提唱する描写もある。

東京でバチバチにやっている美容師なら今でもあるんだろうけど、このドラマを見ていると、

デザイン=カットデザイン

という感じが強い。

今なら「デザイン」と言ったとき、カラーの占める割合がかなり大きくなった印象がある。

昔のウィッグ、毛量多すぎ

時代を感じたものでもう一つ面白かったのが、練習用ウィッグ。

俺が美容師になってウィッグで練習していた頃、先輩からよく、

「今のウィッグ、髪薄くない?これじゃ練習にならんで」

と言われていた。

昔を知らない俺は、「そ、そうすかね……」くらいに思っていた。

でも『ビューティフルライフ』を見て分かった。

確かに多い。
毛量すごい。

セット練習用のウィッグくらいある。

そりゃ練習になるわ。

先輩の言ってたこと、本当だったんだな。

エセキムタクは嫌いだったけど。

25年以上経っても変わらない「レッスン文化」

そして美容師として一番印象に残ったのが、レッスンの描写だ。

これは古いどころか、今見ても分かる。

「俺、レッスン見てくださいって頼みましたっけ」

柊二が後輩の岡部巧(池内博之)のレッスンを見ているとき、岡部が言う。

「俺、レッスン見てくださいって頼みましたっけ」

完全に後輩側が悪いシーンなので、

「こいつ〜」

となる。

俺が言われたら泣いちゃうね。

美容師のレッスンって、営業が終わった後にやることが多い。

後輩が練習する。

先輩がそれを見る。

でも先輩からすると、本来なら帰れる時間なんだよ。

それでも残って後輩のカットやカラーを見て、

「ここ違うよ」
「もう一回やってみ」
と教える。

今になって考えると、めちゃくちゃ優しい。

俺も先輩にやってもらったし、自分が先輩になってからは後輩にやっていた。

そして『ビューティフルライフ』は2000年のドラマだ。

つまり俺が美容師になるより、ずっと前から同じことをやっている。
たぶんドラマよりさらに前から、この文化は続いてきたんだろう。

だからこそ、

「レッスン見てくださいって頼みましたっけ」が響く。

お前……。
先輩、帰れるのに残ってんだぞ。

ただ、岡部は別にずっと嫌なやつではない。

美容師ドラマとしてだけじゃなく普通に面白い

ここまで美容師の話ばかりしてきたけど、恋愛ドラマとしても普通に面白かった。

個人的には10点満点なら7点くらい。

美容師じゃなくてもおすすめできる。

杏子はちょっと癇癪持ち

ただ、常盤貴子演じる杏子はちょっと癇癪持ちかなと思う。

結構怒る。

そこは見ていて、「また怒ってんな」と思うところがあった。

一方で、的場浩司と水野美紀がめちゃくちゃいい。

どっちもいいやつ。

特に水野美紀。

だいたい水野美紀のおかげで上手くいってるドラマだと思う。

この二人のおかげで楽しく見られる。

マユミがろくなやつじゃない

原千晶が演じるマユミという美容師もいる。

こいつがなかなかろくなやつじゃない。

元カレである柊二が同じサロンで働いているにもかかわらず、店長に枕営業する。

しかもマユミは柊二の先輩。

ドン引き。

これも美容師目線で言うと「ありえない」と言うことだけ伝えておく。
そんな女性美容師見たことないわ。

まぁまず美容師どうこう以前の問題である。

「ちょ、待てよ」はちゃんとある

まだ見たことがない人には、一つ安心してほしい。

ちゃんとキムタクの、「ちょ、待てよ」は1話から見られる。

この時代のキムタクドラマだもんね。

俺もめっちゃ期待して見てた。

みんなも探してみてほしい。

ここからちょっとネタバレ

本当にしょうもない話なんだけど、ずっと気になっていることがある。

杏子が入院中にもかかわらず、柊二の家に遊びに来るシーンがある。

柊二が、「どうしたんだよ」みたいに聞くと、

「ゾウさんに餌をあげにきた」と訳の分からないことを言う。

どういうこと……?

と思っていたら、そのあとすぐに、

「抱いて」

と言う。

……。

これってそういう意味なんでしょうか?

誰か教えてください。

美容師になってから見る『ビューティフルライフ』は面白かった

『ビューティフルライフ』に憧れて美容師になった人は実際にいる。

でも俺は逆だった。

ドラマを知らないまま美容師になって、約8年現場に立って、それから初めて見た。

だからこそ、

「これは今もある」

「これはさすがにない」

「昔の美容師ってこうだったのか」

と、普通に見るのとは違う楽しみ方ができたと思う。

25年以上前のドラマだから、美容室の内装も技術もファッションも当然今とは違う。
それでも、強い提案をする美容師がいたり、先輩が後輩のレッスンを見たり、実績のある美容師の背中に後輩が憧れたり。
意外と変わっていない部分もある。

そして何より、柊二は今見ても普通にかっこいい。
雑誌のページを任されて、ショーを任されて、技術があって、自分の提案に自信がある。

そりゃ当時の若者が、「美容師ってかっこいいな」と思うのも分かる。
今はメインでは別の仕事をしているけど、やっぱ美容師もいいよなぁと思える。

美容師ブームを作ったのが本当にこのドラマ一本だったのかは分からない。

でも、実際にこのドラマを見て美容師になった先輩を知っている俺としては、少なくとも誰かの人生を変えたドラマだったのは確かなんだと思う。

思いつく1名のことは嫌いだったけど。

-映画・ゲーム・作品
-