前回、『WEAPONS/ウェポンズ』の感想を書いた。
きっかけは、新しく公開されるバイオハザードきっかけでザック・クレッガーの作品を追い始めたこと。
俺は普段そこまでホラー映画を観る方ではないんだけど、『WEAPONS』は怖さそのものより、「これ、どう繋がるんだ?」という話の作りが面白かった。
最初は関係なさそうな人たちへ視点が変わりながら、少しずつ同じ事件へ集まっていく。
俺はどうやら、怖いものが出てくることより、「この映画どこに向かってるんだ?」が残っている方が好きらしい。
そこで『WEAPONS』の記事を書いたあと、ザック・クレッガーの過去作『バーバリアン』まで遡った。
そしてもう一本観たのが『コンパニオン』。
『コンパニオン』はザック・クレッガー監督作ではないんだけど、クレッガーは製作として参加している。
ちなみに監督・脚本はドリュー・ハンコック。
最初は別々に感想を書こうと思っていた。
でも二本観て、いや、これは一緒に書いた方が面白い。
となった。
理由は単純。
どっちも途中で、「え!?そっち!?」となったからである。
なぜ『バーバリアン』と『コンパニオン』を一緒に書くのか
この二本。
話そのものは全然違う。
でも、観客に最初、「こういう映画ですよ」と思わせるのがやたら上手い。
『バーバリアン』は、夜中に知らない男と同じ家へ泊まることになった女性の話から始まる。
しかも男を演じているのはビル・スカルスガルド。
『IT/イット』のペニーワイズ。
怪しい。
俺は完全に、「こいつがヤバい映画だろ」と思っていた。
一方の『コンパニオン』。
俺は観る前から、アイリスがアンドロイドらしいということだけは知っていた。
しかもメインビジュアルは白目になったアイリス。
題名は『コンパニオン』。
となると俺の頭では、美人なアンドロイドがおかしくなって、殺戮マシーンになる映画。
もしくは、アンドロイドに幽霊か何かが乗り移って人間を襲う映画。
そのどっちかだった。
要するに、
『バーバリアン』ではキースが怖い。
『コンパニオン』ではアイリスが怖い。
そう思って観始めた。
でも、どっちも違う。
この二本の面白さって、「犯人は実は別人でした」みたいなどんでん返しとも少し違う。
こっちが勝手に決めつけた、映画そのものの進行方向を変えてくる。
「この道を走る映画ね」と思ったら、いや、こっち曲がりますけど。と突然ウインカーを出してくる。
それが妙に似ていた。
『バーバリアン』は「知らない男が怖い映画」だと思わせる
『バーバリアン』は2022年のホラー映画。
監督・脚本はザック・クレッガー。
U-NEXTでは本編103分として配信されている。
現在の配信状況は各動画配信サービスでご確認ください。
※配信状況は変更される場合があります。
仕事の面接でデトロイトへやってきたテス。
夜中に予約していた一軒家へ到着すると、すでに知らない男がいる。
ダブルブッキングだった。
その男がキース。
嵐の夜。
知らない家。
知らない男。
仕方なく二人で泊まる。
これだけでもう十分嫌だ。
しかもキース役がビル・スカルスガルド。
お前だろ、となる。
でも、この映画はそこから思っていた方向へ全然行かない。
俺が一番面白かったのは、しばらく何の映画なのか分からないこと。
最初は、知らない男と同じ宿に泊まってしまった女性のサスペンス。
だと思う。
そこから家の地下へ進んで、「ああ、そういう映画?」となる。
さらに、「はいはい、分かった」と思ったところで、
また形が変わる。
ザック・クレッガー自身も、『バーバリアン』は細かく先まで決めて書いた作品ではなく、自分自身を驚かせながら書いていたと振り返っている。
ホラーとコメディについても、観客が一方向を予想したところで別方向へ行くこと、タイミングとトーンが重要だと語っている。
なるほど。
作ってる本人まで先が分かってなかったのか。
そりゃこっちも分からん。
『コンパニオン』は「暴走アンドロイド映画」だと思わせる
『コンパニオン』は2025年の作品。
監督・脚本はドリュー・ハンコック。
アイリス役はソフィー・サッチャー、ジョシュ役はジャック・クエイド。
ザック・クレッガーは製作として参加している。
こっちは最初の20分くらい、かなり普通に見える。
恋人のジョシュと、友人たちのところへやってきたアイリス。
ちょっと変な空気はある。
でも、「これから何か起きるんだろうな」くらい。
俺は別につまらなかったわけではない。
むしろ見やすかった。
ホラーといっても、そこまで怖くない。
だから普通に観ていた。
ただし頭の片隅では、そのうちアイリスがぶっ壊れるんだろうな。
と思っていた。
だって白目だし。
アンドロイドらしいし。
こういう映画だろ、と思うじゃん。
ところが、違う。
ここから先を説明すると、この映画で一番面白かったところまで普通に踏む。
なので、未鑑賞ならここで一回止まっていい。
実は『コンパニオン』側も『バーバリアン』に影響を受けていた
二本続けて観ると、「なんか作りが近いな」とは思った。
調べてみると、これは完全な偶然でもないらしい。
『コンパニオン』を書いていたドリュー・ハンコックは、その最中に『バーバリアン』の脚本を読んでいる。
特に衝撃を受けたのが、物語の途中で視点が突然別の人物へ飛ぶ構成。
ハンコックは『バーバリアン』を読んで、「脚本のルール通りに作らなくても、自分自身を楽しませればいい」と刺激を受けたと振り返っている。
そして後にクレッガー自身が『コンパニオン』の製作へ参加。
ハンコックによれば、二人で数週間かけて脚本を磨いたという。
だから、『バーバリアン』と『コンパニオン』に同じような「次に何が来るか分からない」感覚があるのは、それほど変な話でもない。
ただし、「ザック・クレッガーがまた同じことをやった」って感じではない。
むしろ、『バーバリアン』の自由さを見たドリュー・ハンコックが、自分なりの「そっち!?」を作った。という方があっていると思う。
二本ともホラーだけど、そこまで「怖さ」で押してこない
あと、俺みたいにそこまでホラー映画を観ない人間には、これも大きかった。
どっちも意外と見やすい。
『バーバリアン』は地下へ入っていく前半なんかはかなり不気味。
でも俺の場合、怖い。
より、この先どうなるの?の方が勝った。
『コンパニオン』はさらに見やすい。
怖いというより、
SF。
スリラー。
ブラックコメディ。
そういう要素の方が強く感じた。
だから、ホラーは嫌いじゃないけど、怖いだけの映画だと途中で飽きる。
という人には、かなり相性がいい二本だと思う。
『バーバリアン』『コンパニオン』は現在U-NEXTで見放題
2026年9月現在、『バーバリアン』『コンパニオン』はいずれもU-NEXTで見放題配信されている。
現在の配信状況は各動画配信サービスでご確認ください。
※配信状況は変更される場合があります。
この二本は本当に、詳しいあらすじを知らずに観た方がいい。
特に今回俺が書いている、「思っていた映画と違う」という感覚そのものが面白さの一部だから。
ここから先は、何が「そっち!?」だったのかまで全部書く。
未鑑賞なら、一度ここで観てから戻ってきてほしい。
ここから『バーバリアン』『コンパニオン』のネタバレ
ここからは普通にネタバレする。
『バーバリアン』のキース、地下、マザー、AJ、ラスト。
『コンパニオン』のアイリス、ジョシュ、シャットダウン中の会話、終盤。
全部触れる。
この二本は「最初に何の映画だと思ったか」まで含めて面白いので、未鑑賞なら本当にここで一回止まった方がいい。
『バーバリアン』|キース、お前じゃないんかい
やっぱり前半はキース。
こいつを疑わせる作りがうまい。
そもそも知らない男とダブルブッキング。
泊まっていけと言う。
ワインもある。
話してみると意外と普通。
むしろ良い奴っぽい。
でも、良い奴すぎて逆に怪しい。
完全にこっちは、「こいつが犯人だろ」という目で見ている。
そしてテスが異常な部屋を見つけると、キースは普通に怯えている。
普通に被害者だった。
そしてマザーとかいう化け物が登場、やられるキース。
お前じゃないんかい。
ここで映画そのものが一回ひっくり返る。
俺はこのミスリードが一番好きだった。
キースが死んだ直後にAJ
さらに好きなのがその直後。
キースがあんなことになり、テスもヤバい。
どうなるんだこれ、と思った瞬間。
晴天。
車。
音楽。
場面切り替え。
さっきの続き見せてくれよ、と思う。
普通ならそのままテスの物語を追いかけるところだろう。
でもやらない。
一回全部捨てる。
AJという別の男の話を始める。
そしてしばらくして、あの家の持ち主だったと分かる。
別の映画が始まったと思わせて、結局また同じ場所へ戻ってくる。
『コンパニオン』のドリュー・ハンコックが『バーバリアン』の脚本を読んで特に驚いたのも、この中盤の視点変更だったという。
やっぱりあそこなんだな。
AJ、最後まで本当にクズ
そして家の持ち主。
こいつがいい。
いや、人間としては全然良くない。
キャラクターとしていい。
こいつはこいつの都合で家を売らなきゃいけないから地下の総面積とかをみにしてる。
こいつの人間性が一発で分かる。
終盤は改心したような雰囲気だったんだけどその後さらに進むと、最後。
テスをマザーがいる方へ突き落とす。
安易に、「恐怖を経験して改心した人間」にしなかったのは好きだった。
「野蛮人」はマザーなのか、人間なのか
さらに映画は過去へ飛ぶ。
若い頃のフランクという人物。
ここまで来て、ようやくあの家で何が起きていたのかが見えてくる。
女性を誘拐して監禁。
性的暴行の上その果てに生まれた存在がマザー。
見た目だけなら完全に怪物。
裸で異常な身体。
人間を襲う。
けど被害者でもある。
一番ヤバいのはフランク。
AJだって普通の見た目をしているけど、最後に自分が助かるためテスを落とす。
タイトルは『Barbarian』。
野蛮人。
最後まで観ると、
結局誰のことなんだよ。
となる物語になっている。
ホラーの空気を最後に少しズラしてくる感じ。
俺はかなり好きだった。
『コンパニオン』|そもそもお前が被害者側なんかい
そして『コンパニオン』。
俺が今回、「そっち!?」という意味ではこっちの方が好きだった理由はかなり単純。
もっと根本から外されたから。
俺は最初、アイリスが暴走して人間を襲う映画だと思っていた。
アンドロイド。
白目。
ホラー。
ところが違った。
そもそも、こいつ自由じゃない。
アイリスには色々な制約がある。
自分自身について知っていることすら限られている。
そして話が進むほど、「怖いアンドロイドを見る映画」だったはずが、
アイリス頑張れ、に変わっていく。
感情移入という言葉が合っているのかは分からない。
でも普通に応援してしまう。
シャットダウン中の会話で「そっちなんだ」となった
俺が、あ、この映画俺が思ってたやつじゃない。
と完全に気づいたのは、アイリスがシャットダウンされている間。
その周りで普通に会話が進んでいく。
アイリス本人が知らないところで、こいつが何なのか。
どういう存在として扱われているのか。
少しずつ見えてくる。
そこで、そっちなんだ。となった。
最初はアイリスが加害者側だと思っていた。
人間側がこいつから逃げる映画だと思っていた。
でも実際は、アイリスの方が操作されている側。
この反転が俺にはかなり気持ちよかった。
『バーバリアン』はキースを怪しく見せてから外す。
『コンパニオン』は、アイリスそのものを見る方向を変えてくる。
だから俺はこっちの方が、一本取られた感が強かった。
制約だらけだけど、だいたいスマホがなんとかしてくれる
そこからは割とトントン拍子。
アイリスには色々制約がある。
でも、まあ、だいたいスマホがなんとかしてくれる。
一個ずつ自分にかけられた制限を外していく。
かなりご都合主義的に進むところもある。
でも俺は別に嫌じゃなかった。
『コンパニオン』は97分。
これをあと30分かけて、解除…解除…みたいにやられても多分ダレる。
この映画は、サクサク進んでいいと思う。
記憶をいじって出会いのシーンを作るところ、普通に面白い
そして『コンパニオン』は、『バーバリアン』より分かりやすく面白い場面が多かったと思う。
俺が好きなのが、記憶をいじって、出会いのシーンそのものを作り直すところ。
冷静に考えると結構怖い。
自分が大事にしていた思い出まで作り物。
でも見せ方が妙に面白い。
「あ、そこまで自由にいじれるんだ」という設定説明にもなっているし、重くなりすぎない。
『バーバリアン』にもAJみたいな笑える存在はいるけど、『コンパニオン』の方が、ここ面白いでしょという場面がハッキリ入っていた印象がある。
だからホラーというより、かなりブラックコメディ寄りに見られた。
終盤はご都合主義気味。でもあれで良かった
結構トントン拍子。
じっくり考えれば、そんなうまく行く?はある。
でも、俺はあれでいい。
この映画で見たかったのは、延々苦しみ続けるアイリスではない。
自分にかけられた制約を外して、
最終的に、自分で決めて動けるところまで行くこと。
だから97分で一気に駆け抜けるくらいがちょうどいい。
むしろ、このテンポの良さが見やすさにつながっていたと思う。
『WEAPONS』は「そっち!?」とは少し違う
ここで改めて『WEAPONS』。
これは今回の二本とは少し違う。
『WEAPONS』は、「え!?そっち!?」
というより、「これ全部どう繋がるの?」だった。
だから今回の二本の中には入れなかった。
ただ、全体像を最初から見せない。
突然視点を変える。
妙なところで笑わせる。
ホラーの空気を少しズラす。
というところでは、やっぱり『バーバリアン』から『WEAPONS』まで繋がっている。
クレッガー自身も、ホラーとコメディはどちらも「観客の期待を外す」ことやタイミングが重要だと繰り返し話している。
ここまで観ると、次に気になるものは決まっている。
ザック・クレッガー版『バイオハザード』で何するんだよ。
普通のゾンビ映画になるのか。
それとも、また俺らが勝手に「こういうバイオだろ」と思ったところから外してくるのか。
そこについては、次の記事で書こうと思う。
まとめ|何の映画なのか分からない時間が面白い
『バーバリアン』と『コンパニオン』。
話は全然違う。
でも二本とも、観客に一度「こういう映画だろう」と思わせる。
そして、外す。
俺は怖いだけのホラーだと途中で慣れてしまうことがある。
でも、「次は何してくるんだ?」が残っていると飽きない。
しかもこの二本、ホラーとしてはそこまで怖すぎない。
俺みたいに、ホラーは嫌いじゃない。
でも怖いだけだとちょっと飽きる、という人にはかなり見やすいと思う。
そしてできれば、詳しいあらすじは知らずに観てほしい。
勝手に予想して、勝手に決めつける。
そして、「そっち!?」となる。
現在の配信状況は各動画配信サービスでご確認ください。
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